税理士の将来性は不安?

税理士という仕事に対してどのようなイメージを持っていますか?世間一般的には、将来的に独立開業も可能で堅実な仕事と思われている風潮があります。ただ税理士の仕事に詳しい人の中には、将来性に不安を感じている人も少なくありません。この記事では税理士の将来が不安視されている理由や、税理士として生き抜く方法について紹介します。

税理士の仕事

税理士とは個人や法人の顧客の売上に対する税計算を行い、節税対策の指導や決算書の作成を行う、いわゆる会計・税務のプロです。税務処理や申告書の作成などは事業主や経理担当者でも出来ますが、税計算は高い専門性が必要であり、また税務申告に必要な書類は正確性が求められる事から税理士に任せるケースも多く、企業や事業主から頼りにされる存在と言えます。

税理士の資格を取得するには難しい試験に突破しなければならず、また税理士として働く際には細かいミスも許されません。社会的な責任も重い仕事ではありますが、それでも税理士を志す人が多いのは、業績や景気に左右されず、安定して仕事が確保出来るからです。また人に雇われるのではなく、独立が目指せるのもメリットと言えます。実際のところ、税理士にしか行えない独占業務が法律で定められているため、企業など組織に属して働く税理士より、独立開業している税理士の方が圧倒的に多くなっています。さらに定年も定められていないため、世間一般的には一度資格を取得すれば一生安泰というイメージが強いかもしれません。

税理士の現状

長い期間、税理士の資格保有者数は減少せず、むしろ年々増加傾向にあります。税理士の資格を持つのは税理士試験合格者や、税務署OBなどの試験免除者、大学院税法科の修士課程修了者、さらには公認会計士や弁護士の有資格者も含まれ、毎年700人前後増え続けています。税理士は定年退職がなく、本人の気持ち次第でいつまでも続けられる仕事でもあるため、新規の資格保有者の分、税理士人口が増え続けるという現象が起こっています。ちなみに公認会計士や弁護士、社会保険労務士などと比べても税理士の人数の多さは突出しています。

そして税理士全体の年齢構成に目を向けると、かなり高齢に偏っている点も懸念材料となっています。税理士試験の受験者数が減少して若年層の税理士の割合が小さくなっている反面、税務署OBの中高年世代の数が多く、60歳以上の税理士は実に半数以上を占めているのが現状です。若い世代の税理士試験受験者数減少が一時的であれば問題ないですが、年々ジワジワと減少傾向にあるのは心配な点です。将来的には働き手の減少や少子高齢化が進んでいくため、先の事を考えると放置できない大きな問題と言えます。

税理士は将来性が無いと言われる理由

税理士は簡単に目指せる仕事ではありません。合格率の低い厳しい試験に合格するのは、並大抵の事ではないのです。ただようやく掴んだ税理士の座にも関わらず、将来性が無いという声もチラホラ聞かれます。その理由の一つとして、まずAI(人工知能)技術の発展が挙げられます。他の業界でもAIによる仕事の効率化や自動化が進んでいますが、税理士の世界も例外ではありません。実際、会計ソフトの中にもAIの学習機能を駆使し、領収書などから自動で仕訳が出来るものも出ています。

また一部の大手税理士法人では、RPAというソフトで会計処理をするという試みが行われています。このRPAとはAIや機械学習などの認知技術を用いて一定の仕事を自動化するもので、ロボットプロセスオートメーションとも呼ばれます。AI技術はまだ一定の簡単な作業しか出来ない状況ですが、将来的にはさらに技術開発され、人の手を介さず複雑な作業が出来ると予想されています。RPAやAIは定型かつ反復的な要素に強いため、記帳代行や会計処理、税金の計算などは人の手から離れる時代が来るかもしれません。

そしてもう一つ、税理士の将来が不安視されている要素として、中小企業の減少が挙げられます。税理士の主な顧客と言えば中小企業になる訳ですが、不景気による倒産、後継者不足によって廃業する会社が続出しています。特に地方都市の中小企業減少率は顕著で、それに伴って税理士の需要も減ってきているのです。税理士人口が増えている一方で顧客の数は減り続けており、顧問契約の獲得競争はどんどん激化していきます。税理士にとっては、少しでも多くの顧客を獲得したいという思いも強く、結果的に顧問報酬の下落を引き起こす要因に繋がります。

税理士の需要は無くならない

AI技術の進化、顧客となる中小企業の減少などで、税理士の出番が無くなるのではないかと心配する人も少なくありません。確かにそう遠くない未来に人の手に代わってAIが行う作業が増えてくると考えられています。低コストで導入できるようになれば、人件費を削減したい企業にとっては、高い税理士顧問料を支払うよりお得と考えるかもしれません。

ただし技術が進化したからといって、税理士の需要が全く無くなる訳ではないのです。例えば決算内容や財務事情、社長の意向などを取りまとめ、企業の収益を高めていくにはどうすれば良いかアドバイスするコンサルティング業務などは、AIやRPAでは出来ない仕事です。また節税相談に対するアドバイスも税理士の大切な役割で、的確な指摘をするには経験で培ってきた知識が必要であり、AIやRPAでは難しい分野と言えます。AIやRPAを用いた技術がどれだけ正確であっても、顧客にとってもは長年関係を続けてきた税理士の方が安心感を覚える事もあります。つまり社長の右腕となって、経営コンサルティングの力を存分に発揮できるような税理士であれば、いつまでも重宝される存在であり続けられるのです。

税理士として勝ち残るために

税理士として活躍し続けるにも、資格を取ったらゴール・安心という気持ちでは勝ち残れません。ただでさえAIやRPAの進化により、記帳業務や税務書類作成といった業務にも携われなくなる可能性もあるため、業界で生き残るには自分の武器を持っておく必要があります。具体的には、まずAIやRPAについて理解し、使いこなせるITスキルです。せっかく導入してもどのように活用すれば良いかわからなければ仕事にならないため、AIやRPAを制御できる人材は重宝されます。プログラミングなど本来の税理士業務とは一見関係のないスキルでも、持っておくと仕事上で役立つ時もあり、人に差をつける事が出来ます。

またコミュニケーションスキルのアップも必須です。AIやRPAの出現で、簡単に顧問契約を打ち切られる可能性もゼロではありませんが、一方でクライアントから「この税理士なら安心出来る」「この税理士の言う事なら間違いない」と絶大な信頼を得られる存在であれば、良い関係は長く続きます。特にコンサルティング業務によって信頼度も大きく変わるため、日頃からコミュニケーションをしっかり取って企業の内情を知り、相談を受けた際には適切なアドバイスが出来るよう備えなければいけません。

そして専門分野を持っておくのも大切です。国際税務や相続、M&Aなどはグローバル化や日本の少子高齢化から増えていく案件と予想されています。それぞれに高度な知識や英語力が必要になるため、仕事をしつつ積極的に自ら勉強していかなければいけません。専門性の高い知識を持っていれば、「この税理士に聞けば何でも的確に答えてくれる」とクライアントからの信頼も厚くなります。安定的に仕事を獲得していくためにも、プラスアルファの要素を身に付けて税理士としての価値を高めていく事が大事なのです。

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